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第340話
「うまそ。
腹減った」
「簡単な物ばかりですけど」
「遥登が俺の為に作ってくれたんだろ。
ご馳走だ」
本当にそう思う。
三条が自分の事を思って作ってくれた料理を、一緒に食えるなんてしあわせだと今でも思う。
それに、サラダには生ハムが入っていたり本当に豪華だ。
その1つをひょいと持ち上げると子供の様に食い付いた。
「ん、うめぇな。
ほら、遥登も」
「え、あ、いただきます」
恋人も共犯にした事に満足したのか、悪戯気に笑う。
釣られて三条が笑うと部屋はより明るくなり4年前とほんの少しの前までの部屋を思い出せない。
フライドチキンとポテトを温め直し、持って行く先にはオムライスが既に用意されていた。
溢れるしあわせをしっかりと全身に受け、噛み締める。
クリスマスなんて当に祝うのをやめた長岡だが、またこうしてケーキやご馳走を用意し祝う。
いや、本当はクリスマスなんてのは口実だ。
恋人と過ごす為の言い訳でしかない。
「正宗さん、烏龍茶で良いですか?」
「あぁ。
俺がするって言ってるだろ。
ほら、座りな」
肩を押して定位置に腰掛けさせるが、三条はでも…と腰を浮かす。
「それと、後でレシート見せな」
「今日は特別な日ですから俺も出すんです」
「遥登といると毎日特別だけどな」
ふわふわと花を咲かせる三条をあの日の自分は想像出来なかった。
こんなにしあわせな毎日を過ごせる事も。
綺麗に整えられた眉を下げひとつ息を吐いた。
「お疲れですか。
今日は早く寝ましょうね」
「セックスするに決まってんだろ。
クリスマスだぞ」
「クリスマスは関係ない様な気がするんですけど…」
「だって今日だろ」
なにが、なんて言わずとも解っている。
今日が2人にとって大切な日だと。
ありったけの気持ちを伝えたい。
どうすれば伝えられるか、伝わるのか。
その日を彩る食事が豪華なのも、何時もより笑顔が眩しいのも当たり前だ。
手に入ればなんでも良いと思っていた筈なのに、今は笑顔を守りたいと強く思う。
何よりも大切な遥登と、よく似合う笑顔が大切だ。
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