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第343話
サラサラの髪が顔を覆っているが、どんな表情をしているかなんて手に取るように分かる。
爪の形をなぞる様に丁寧に塗り込まれるハンドクリームはもう3本目だ。
子供体温で爽やかなにおいが更にかおり、自分で塗っている時とは違うにおいな気がする。
「はい、終わました」
「ありがとな。
手ぇ、軽くなった」
湯上がりにマッサージを兼ねてハンドクリームを塗ってくれる三条は何時もにこにこと口端が上がっている。
その唇にちゅぅっと吸い付くと頬を染めた。
「それから泊まってくれてありがとな」
「俺が、泊まりたかったから…です」
「俺も泊まって欲しいって思ってた。
遥登の体温が恋しくてたまんねぇの」
「あ、の…」
頬から耳を撫で髪に手を差し入れると緊張し出す恋人。
可愛いくてつい意地の悪い事をしたくなってしまう。
後頭部を撫でながら顔を覗き混む。
恥ずかしそうに目を泳がせる初な恋人に長岡の口端も上がる。
「あの毛布も好きだろ」
「正宗さんの分が、好きです」
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