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第345話

「正宗さん、待ってください…」 「ん?」 甘い空気になってきたと言うのに三条は待ったをかけた。 とろとろしてきたのにまだ理性の方が勝つ辺り三条らしい。 「プレゼントがあるんです。 去年、俺ばっかりが貰ったから」 「あれはプレゼントっつぅか、俺が穿かせたかっただけだ」 「でも、貰いました」 時々忘れてしまうが、三条は頑固だ。 飲酒も駄目な物は駄目とはっきりと言える。 リュックから取り出されたプレゼント。 「これ、気に入って貰えると良いんですけど」 「まさか、バイトはこの為か?」 「違わなくもないですけど、バイトは他に必要だからです。 実習用にネクタイも欲しいですし、弟達にもクリスマスプレゼントあげたかったですし。 あの、受け取って貰えますか」 眉を八の字にして不安げに見詰めてくる様はグッとくる。 泣かせてぇ 邪な考えをぐっっと押さえ、細い身体を抱き締めた。 清潔なにおいも子供体温もたまらないが、今は感謝を伝えなければいけない。 「ありがとな。 すっげぇ嬉しい」 開けて良いかと問うと頷くいたのでリボンを解くと、気持ちの良い手触りの物に触れた。 「マフラー。 大人っぽいな」 「洗濯用です」 「こっちがメインだろ。 大切に使う」 「量販品店のですけど。 でも、これで俺のって分かりますね」 屈託ない笑顔で何を言うか。 時々現れる三条の独占欲はまだ可愛らしいものだが、この恋人の執着が嬉しい。 想われているのだと強く実感出来る。 ま、日頃だって見てりゃ解るけどな。 「そんな可愛い事言われるとやべぇって」 「…続き…します、か?」 「ん、してぇな」

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