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第360話
恋人の隣で目を覚ます朝はしあわせで満ちている。
ふわふわの毛布にくるまれ長岡のにおいと相まって、ここは天国の様だ。
あたたかな腕に抱かれ目を覚ました三条は、ぼんやりとした意識を次第にはっきりさせていった。
……昨日、シャワー浴びた記憶がぼんやりしかない
そういえば、首輪も外されてる
何から何までしてもらうなんて不甲斐ない…
眠くて船を漕いでいた記憶はあるが、ベッドに横になった記憶がない。
また迷惑をかけてしまった。
骨と皮だけみたいな貧相な身体と言っても背丈の分だけ体重はある。
それも寝惚けているなら支えるのも重かっただろう。
痺れない様に枕と肩の間に伸びている腕に頬をすりっとくっ付けた。
どれ位の時間セックスをしていたのかは解らないが、夕食を食べ終え風呂に入り早々に寝室に来たのだから…。
時間を逆算していくと寝落ちても納得出来そうだ。
長岡もぐっすりと眠っている。
まだカーテンの向こうは暗い。
なら、もう1度眠って体力を回復させたい。
ゆっくりと目蓋を閉じた三条たったが、すぐに身体を震わせた。
「…っ」
寝ている筈の恋人が細い身体を抱き締めてきたからだ。
ドキドキと五月蝿くなる心臓。
枕になっている腕が、まるで自分の上に乗せようとする様にきつく抱き締める。
「まさ…」
寝てる…
寒かっただけか
起きたかと思った
恋人は体温が低い。
子供体温に暖を求めただけらしい。
規則正しい寝息にそれを悟った。
目の前の肩までしっかりとふとんをかけたいが抱き締められていてはそれも上手く出来ない。
今日も仕事があるのにこうして時間を調節してくれて風呂の世話にまでなったのだ、少しでも多く寝ていて欲しい。
それなら──いや、本当は三条がそうしたいだけなのだが──三条から抱き付き体温を分け合う。
一緒に眠れるなら湯たんぽ代わりでも抱き枕でもなんでも良い。
あたたかな腕と長岡のにおいと、安心感にすぐうとうとと眠気はやってきた。
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