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第362話

「先、洗面台使うな」 「はい」 ベッドから抜け出た長岡に頷くと三条も漸く半身を起こした。 時間を確認しようとスマホに手を伸ばし、その手が止まる。 「……っ!」 なぜ、今さっきまで気が付かなかったのだろう。 三条はソレを手に冷たい廊下を背中を追って駆けた。 「正宗さん! プレゼントっ」 「良い子にしてたからな」 「ありがとうございますっ」 両手に収まるサイズのプレゼントをしっかりと抱いてふわふわふにゃふにゃ笑う三条に、長岡も同じ様な毒気のない笑みを返した。 開けてみ?と誘うといそいそと包装を解きだした。 丁寧に、包装すら大切だとばかりに。 「またさくらんぼ柄のパンツ…っ」 「残念。 アメリカンチェリー柄だ」 「同じですっ。 …やっぱり意識してますよね」 「俺もミックスべりー柄買ったからお揃いな」 「……それなら、良いですけど」 「良いのか」 「お揃いなら…」 「ほら、早く歯磨きしてしまえ。 キス出来ねぇだろ」 洗面所から聴こえてくる楽しそうな会話は暫く続いた。

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