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第365話
「はぁー…、だりぃ」
「ははっ、お疲れ」
三条は、自販機から飲み物を取り出すとその場で一口煽った。
目の前には同じく講義を受けに来た友人。
同じくと言っても彼の場合は単位が足りなくての参加だが。
「1限から授業なんかとるんじゃなかった…。
こんな足りねぇとか思ってもみなかった……」
「1限の授業じゃ会わないよな」
「んー…、眠くて起きれねぇの。
前日のバイトのシフトが深夜までだし日にちが悪いんだよな」
項垂れていた友人は顔を上げると同じく飲み物を一口飲んだ。
細やかな休息に吐けるだけの溜め息を吐ききるつもりらしい。
ポケットからキャラメルを取り出し差し出すと、遠慮なくと手が伸びてきた。
こんな時こそ糖分だ。
「格好良いな」
「うん?」
「俺は短期バイトばっかりだから、1つのを長く続けるって責任感があるんだなって思って。
格好良いな」
「三条…良い奴」
「ははっ、本当にそう思ってるだけだよ」
1つを長く続ければ人間関係の面でも悩みが出てくる。
仕事が出来る奴だと認識されれば仕事量も増え、それでもなぁなぁにしている奴と同じ金額しか貰えない苛立ちも出てくる。
それに対して不満を言わない友人を格好良いと三条はいつもの調子で賞賛した。
「なんか三条といると気ぃ抜ける。
あ、良い意味でな。
周りに人がいる理由がよく分かった」
「褒めてもキャラメルしかねぇよ?」
「俺も本気で思ってんだよ。
でも、キャラメルは貰う。
久し振りに食うとうめぇな」
学勉の間の楽しい休息。
このキャラメルも腕時計も心を落ち着けるお守りだ。
それがあれば大丈夫。
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