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第366話

玄関ドアを開けると誰に言うでもなく癖になった挨拶をする。 可愛らしい鈴の音がするのは綾登が遊んでいるからだろう。 顔を見たいがまずは手洗いうがいをしなければ。 「ただいま」 「兄ちゃん、おかえりー」 「何作ってんの?」 手洗いうがいに台所へ顔を出すと優登がゴムベラを握っていた。 「バナナケーキ。 綾登のおやつに沢山買って来たって言うから分けて貰った」 「俺の分ある?」 「当然!」 「やった。 楽しみだな」 声が少し大人っぽくなった弟だが、笑顔は変わらない。 隣で手洗いうがいを済ませる頃には飾り用のバナナを上に乗せ終わりオーブンに入れるだけになっていた。 いつの間にこんなに手際良くなったんだろう。 「楽しみだなぁ。 何飲みながら食おうかな」 「俺はミルクティーが良いな」 「はいはい。 ミルクティーしようか」 「早く綾登も食える様になれば良いのにな」 母と遊んでいる小さな弟。 そうだな、早く一緒に食いたいな。 そうしたら1本じゃ足りないかもな。 なんせこの兄弟の弟だ。 きっと沢山食べる筈だ。

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