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第368話

マフラーをしていても冷える。 吐く息は真っ白だ。 でも、雪がないだけ有り難い。 停留所から坂道を上がり恋人の待つ部屋を目指す。 あの部屋が、あの人が恋しい。 早足になると手に持ったコンビニ袋が揺れた。 飲み物とお菓子が入ったそれを持った手はポケットに入れられず冷たい。 だけど、これから会える恋人の事を考えると身体の奥の1番やわらかい場所があたたかくなる。 不思議だ。 あんなに毎日会っていたのに、その時はこんな気持ちにならなかった。 それがお互いの気持ちを知れてからカタチを変えた。 これが恋だと 愛だと知れたのは長岡のお陰だ。 人に堂々と言えない関係だとしても、大切なのはお互いの心だ。 立場や関係、性別、そんなものは恋人の隣にいれるしあわせに比べたら些細な事。 本当は大きな事なんだろうが、そんな事でうじうじ悩む位なら長岡の事を考えてしあわせな気持ちになりたい。 長岡のしあわせを考えたい。 そっちの方がずっと有意義だ。 少なくとも三条はそう思う。 階段を上がりきって1番奥の部屋の呼び鈴を押す。 すぐに扉が開いて愛しい笑顔が出迎えてくれる。 「おはようございます」 「はよ。 遥登」 何よりもその笑顔を見られる事が嬉しい。

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