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第369話
スニーカーを脱ぎ、まずは手土産を手渡す。
外泊の時は一緒に飲む飲み物やお菓子を持参していくのが恒例だ。
夏場はアイスが多いが今日はスナック菓子とチョコレート、しょっぱい煎餅にした。
年末年始の特別番組を観ながらおやつに食べるつもりだ。
「これ、どうぞ」
「ありがとな。
おい、手ぇ冷てぇな」
ぎゅぅっと手を握り締められふにゃふにゃしていく。
「まずはあったかいの飲もうな。
何が飲みてぇ?」
「正宗さんと同じのが良いです」
だらしない笑顔に同じ物を返す長岡の手の方があたたかい。
何時もと逆だなと笑うとにっと口角か上がった。
あ、好きだ、と思う。
「しかし、年末年始も男の部屋に外泊なんて優等生もやるな。
1ヶ月しないで試験あんだろ」
「優等生じゃないですって。
勉強道具は一応持った来ました。
お邪魔でしたら…」
「帰んなよ。
一緒に年越し出来んのすげぇ嬉しいのは俺だけか?」
「俺もっ」
食い気味で返ってきた可愛らしい返事に気を良くした長岡は肉付きの悪い頬を両手で包むとそこに影を落とした。
上気する頬に満足気な笑みを溢し形の良い唇が弧を描く。
「良かった。
俺だけだったらどうしようかと思っただろ」
「正宗さんとなら毎日だっていたいです」
「んだそれ。
嬉し過ぎんだろ」
本当に嬉しいと分かる顔で喜ぶ恋人は早くあったかい部屋に案内する。
机の上には蜜柑が転がっていて長岡も正月休みを満喫する気満々らしい。
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