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第372話

定位置に座りコーヒーを飲みながら録画していたドラマをぼーっと眺めていると、もう1つの頭が此方を向いた。 「チョコレート食べますか」 「貰って良いか?」 「どうぞ」 トレーから1つ摘まみ上げ口に放り込むと、ふわふわ笑う恋人も1つ口にする。 その笑顔に近付きたい長岡は床に腰をおろした。 「これ、うめぇな」 「お口に合って良かったです」 洋酒の入ったチョコレートを口の中で溶かしながら熱いコーヒーを飲む。 大人だから出来る楽しみ方だ。 子供の頃チョコは甘い方が好きだったが今はビターな方が好きなのも、味覚が大人になったから。 子供心は忘れたくないが、大人が嫌な事ばかりだとも限らないのはこういう時だ。 「もっと食べてください」 「ありがとな。 んじゃ、いただく」 同じ物を食べながら同じ物を観る贅沢に長岡は身体の力を抜いた。 肩も肘も張らない。 ありのままでそこにいる。 ダラダラと休息を味わう。

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