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第373話
冷たい風が吹き晒す外廊下で鍵を差し込むとあと少しで恋人に会えると心が弾む。
まるで付き合いたての恋人みたいだ可笑しくなるが、あの子にベタ惚れなのは事実だ。
「ただいま」
「正宗さん、おかえりなさい」
夕食の買い出しに出掛けていた長岡は、ドアの開閉音に顔を見せた三条の腕を引いて抱き締めた。
「遥登のにおい最高…」
「どうかされたんですか?」
「レジで前に並んでた年配の女性の香水がキツかったんだ。
甘ったるくて、遥登のにおいが恋しかった」
「なるほど」
くんくんと首に顔を埋めておいを嗅ぐと恋人はころころと笑いだす。
くすぐったいのだろう。
だが、やめてなんかやらない。
清潔なにおいにさっきまでのにおいの不快感が消えていく。
背中を擦るあたたかい手に甘え冷える廊下で抱き合った。
長岡が満足するまで三条は大人しくされるがまま。
こういう優しい所も好きだ。
「癒された。
ありがとな。
少し早いけど夕飯の仕度するからゆっくりしてろ」
「俺も手伝います」
「じゃ、頼もうかな」
やけに大きな買い物袋を手に帰ってきた長岡はそれを作業スペースに置くと先ずはうがい手洗いをする為レバーを上げた。
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