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第374話

「遥登いるなら手巻き寿司食いてぇなって思ってな。 こういうの1人だと中々食えねぇだろ。 遥登居てくれると色々食えて嬉しい」 値段を気にして半分出すと言い出しそうな三条が口を開く前に、本音を話す。 ちらし寿司や生寿司はスーパーで1人分が売っていても、手巻き寿司は予め具材が決まっているのしか売っていない。 あれはツナマヨや納豆や生魚以外が半分を占めているし選ぶ楽しさがない。 美味いけどな。 セットを買って1人で食うのも良いのだが、どうも手巻き寿司を1人で食うのはな…と憚られていた。 が、今日は三条がいる。 よく食う三条。 なら、たまの贅沢だ。 今にも、でも…と言いそうな恋人の髪を撫でくりまわすと学校では見せないにっこりと笑顔を向けた。 「一緒に食ってくれねぇのか?」 「食べたい、です」 「アボカドも買ってきた。 あと、遥登の焼いたたまご焼き食いたくてたまごも」 「たまご焼き位いくつでも焼きますよ」 黄色くてふわふわしてて、塩梅がぴたりと合うあのたまご焼き。 それが食べたいと申し出ると簡単だと頷いた。 だが、遥登が作ってくれるたまご焼きは遥登が部屋にいる時しか食べられない物だ。 食べたいと思っても簡単に食えるもんじゃない。 「だし巻きも美味いよな」 「どっちが良いですか?」 「どっちも」 「たまごが足りればどっちも焼きますよ」 子供みたいな事を言っても受け入れてくれる恋人を甘やかすのが楽しくて仕方がない。

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