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第376話

「今年もあと少しですね」 「そうだな。 A組が卒業したり色んな事があって、あっという間だったよ」 本当に色んな事があった。 温泉旅行に連れていってもらったり、高校卒業、大学入学、綾登が産まれて年号が令和に代わったり。 大学でセックスもした。 長岡贔屓の球団が優勝した時は一緒に喜んだ。 高校時代の様に会えなくて寂しい時もあるが、なにせ目標が高いから沢山頑張りたい。 早く背中が見たい。 そんな毎日だった。 「卒業式の正宗さん、ホストみたいでした。 また見たいです」 「一張羅だっつってんだろ。 それに、遥登だってラブホでコスプレしだろ」 「あれは…正宗さんが……」 気持ちを落ち着かせる為にマグを煽る三条とは対照的に長岡は楽しそうだ。 この顔だって沢山見れた。 長岡先生は見る機会が減ってしまったが、それでもこんなやわらかい表情は自分だけの特権。 嬉しいに決まってる。 「来年こそは日本一ですね」 「あぁ、今から楽しみだ。 何時か一緒に試合観に行こうな。」 「はいっ あ、伝統の一戦が良いです!」 「そうしような。 ビールも飲もうな」 「はいっ!」 にこにこと笑う三条につられて長岡も嬉しそうに頷いた。 こうして好きな人と笑って過ごせる毎日がしあわせでたまらない。 長岡は破いたらビニール袋から蜜柑を取り出すとあったかい手に握らせた。 「平べったいのが甘いんだろ」 「じゃあ、これは正宗さんが食べてください。 甘いですよ」 既に皮が並ぶ卓上にまた2つの皮が増えた。 そうして蜜柑を食べたりくだらない話で盛り上がっていると、テレビの向こうが騒がしくなってくる。 2人はテレビに向き合った。 「あ、カウントダウンはじまりましたよ」 5、4、3、2、1 「あけましておめでとうございます」 「おめでとうございます」 咲き乱れる笑顔で、また1年がはじまった。

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