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第379話

ガランガランと本坪鈴の音が響いた。 ドラム缶をくり抜き暖をとる老人達の会話と風が椿の葉を揺らす音が大きく聞こえる。 静かな境内だが何時もより賑やかだ。 手を叩き頭を下げて、願う事は今年も同じ。 新しいマフラーは触り心地が良く首回りが気持ち良い。 そんな風に自分の心をあたためてくれる恋人と今年も過ごせる様に。 穏やかに過ぎていく時間が愛おしい。 にこにこと鮮やかな笑顔が愛おしい。 こんな気持ちはじめてだ。 あと、それからー… 目蓋を開けて隣を見やると背筋をすっと伸ばし手を合わせている三条の鼻が赤くなっていた。 雪が降らなくとも冷える事には変わりない。 色素が薄くすぐに赤らんでしまうのを気にしているから口にはしないが、風邪でもひくんじゃないかと心配になる。 ぽけっと眺めてたいると、ゆっくりと上がる目蓋。 その向こうから綺麗な目が見えた。 すぐに、その目は此方を向いて自分を捉える。 漸くだ、なんて思ってしまうと言えば笑うだろうか。 「お待たせしましたか?」 「いや、俺も今願い終わった。 じゃ、御神籤ひくか」 「はいっ」 もう、もう1つの願いはもう叶った。

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