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第380話

参道には近所の老人が数人、暖となる火の番をしている。 その横を通り抜け境内に向かった。 ドキドキするのは長岡と一緒だから。 だけど、目立つ背丈に視線すら寄越さない。 余程話に夢中の様だ。 本坪鈴を鳴らしても老人達の会話は途切れない。 今は大丈夫なんだと身体に走っていた緊張がほんの少し緩む。 なんでも、鈴の音には魔除けの効果があるらしい。 平安時代には軒先に風鈴を吊るす事で悪いものを家に入ってこない様に、そんな風習もあった。 日本にはそんなに悪霊が多いのだろうか。 手を叩き、皺を合わせる。 欲のない三条の願いは簡単だ。 弟達の健やかな成長と家内安全。 沢山勉強がしたい事ともう1つ。 貪欲だろうが、自分にとって大切な願いだ。 どうか、どうか、お願いします そっと目を開けた。 吹き晒しになった回廊を目に映し、視線を横に動かした。 自分以外の幸福を願う喜びを教えてくれた人は既に参拝を終えたのか此方を見ている。 大好きな人の優しい顔にきゅんとした。 それと同時に、もう願い事が叶ったと嬉しくなる。 「お待たせしましたか?」 「いや、俺も今願い終わった。 じゃ、御神籤ひくか」 「はいっ」

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