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第378話

新年早々の初デートに足が軽い。 暖冬というだけあって雪のない歩きやすい道路を2人並んで歩く。 隣を歩くのはプレゼントのマフラーを巻いた恋人。 夜は誰にでも平等だ。 格好良い恋人に思わず笑みが溢れる。 「しっかし、人いねぇな」 「その方が良いですよ」 「なんで?」 「なんでって…」 長岡はその答えを知っている。 ただ、自分に言わせたいだけだ。 「正宗さんと並んで歩けるからです」 声を潜めれば名前だって呼べる。 多くの人が眠る時間、そして少しハメを外しても参拝の帰りだろう許される日だから出来る事。 大学の近くといっても静かな住宅街。 細い道を選んで歩く理由は自動車の通りがないから。 長岡は後ろを確認すると三条の手を握った。 「え…、正宗さん」 「あそこの角まで」 ほんの数メートル先の曲がり角を指差し綺麗な顔で微笑んだ。 吐く息が白く溶け、モノクロの世界は色鮮やかに恋人を映し出す。 返事をする代わりにぎゅっと冷たい手を握り返すと、ゆっくりと歩いた。 勿体無いけど、生徒と教師の関係は元であってもリスキーだ。 解っている。 だから、繋いだ手をしっかり握りゆっくりと歩く。 「手ぇ繋いで歩くなんて初々しいな」 「俺は嬉しいです。 いつも車だから一緒に歩くのも楽しいです」 「部屋に引き返さねぇ? 今すぐ抱きてぇ」 「そっ、外ですよっ。 声が大きいです…っ」 「でかくねぇよ。 で、帰るか?」 「……あ、…後で……」 夜は、みんなが平等に与えられた休息なのかもしれない。

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