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第382話
今年もコンビニで購入した中華まんを半分こしながら街灯の少ない道を並んで歩く。
こういう時、田舎は良いもんだ。
2年参りに行った人も殆んど見掛けない。
「美味しいですね」
「あぁ、美味いな」
参拝後に貰った甘酒で舌を火傷したのか三条は何時も以上に執拗に冷ましてから食い付いている。
長岡でさえ熱いと思ったのだから三条には余程だったのだろう。
後で上顎を確認しよう。
またしっかりと冷ましてから齧り付いた。
「そう言えばさっき御神籤が確率の問題とか言ってましたけど、正宗さんって神様とか信じてるんですか?」
突然の質問に中華まんを嚥下してから口を開いた。
「いや、別に。
でも、藁にも縋るんだよ」
「藁…?」
神も仏も、熱心に信仰したりはしない。
亡くなった家族は大切にするにこした事はないし、クリスマスだってケーキが食えるなら祝う。
彼岸におはぎやぼたもちを食うのも同じだ。
長岡にとってはそれだけだ。
だけど、これからもこの笑顔をとなりで見ていたいから神頼みをした。
一緒に外を歩きたいから真夜中の初詣に誘った。
宣戦布告だ、なんて言ったが神だってそこまで意地悪ではないだろう。
都合が良いだろうが、自分じゃあるまいしな。
そんな性根が歪んではいないだろう、と。
「受験の時とかお参りに来ませんでした?」
「特には」
「あれ、でも、俺の受験の時は御神籤…」
「……遥登の事だとな」
きょとんとしたと思ったらふはっと笑顔が咲いた。
嬉しそうな顔しやがって。
「前見て歩かねぇと転ぶぞ」
「そんな子供じゃないですよ。
それに、顔が見たいです」
「生意気になったな。
ほんと、成長期ってのはこえぇ」
なんて、嬉しくもあるけどな。
並んで歩けるのが例え月さえ出ていない深夜だとしてもそんな事は些細な事だ。
寒い筈なのに、身体の奥の1番やわらかい場所がぽかぽかとあたたかくなる。
三条の隣は居心地が良い。
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