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第385話
「ハァ…ハ……」
「下手くそ」
顎を掴んだまま嬉しそうに言う恋人。
顔を覗かれ、茶けた髪から滴が落ちてきた。
冷たくて長岡の手みたいだ。
「嫌、ですか…?」
「すげぇ好き」
この拙いキスが好きな長岡は愚問だと笑い飛ばす。
年が明けてまだ数時間しか経ってないのに、もう沢山キスをしていた。
すごくしあわせで、嬉しくて、溶けてしまいそう。
ずくずくに溶かされてしまう。
綻んだ顔が近付いてくる。
きつく目を瞑りその瞬間を待つがなかなか与えられない。
不思議に思い、そっと目を開けると綺麗な口元が弧を描いていた。
「期待してくれたのか」
「…っ!」
喉の奥で笑う長岡に羞恥心が一気に溢れた。
やばい、はずかしい…っ
背中を向け顔を隠したつもりが無防備な背中を晒す事になっているのに気付いていない。
背骨の浮き出た真っ白な背中のちゅっとマーキングをすると、びくりと大きく身体が跳ねた。
薄く色付く独占欲。
「嬉しいよ。
ほら、キスしようか」
今度こそ与えられた唇のやわらかさに陶然となる。
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