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第387話

「遥登、おいで」 一足先に横になった長岡はベッドを叩いた。 なんだか恥ずかしくなって頬が熱い。 その……、ちょっといやらしいって言うか。 洗い晒しの髪や完全にオフスタイルの服。 襟刳りから覗く色っぽい胸鎖乳突筋や鎖骨。 ぽん、と触れるシーツの清潔さ。 自分しか知らない恋人の1面にセクシャルなものを感じてしまう。 ベッドに膝を乗せると今度は2人分の体重を受けて軋んでしまった。 「失礼します」 「ん、どうぞ。 あったけぇ」 湯たんぽ宛ら、細い身体を抱き締め暖をとる長岡はそれでも素直に抱き付いてくれた恋人の背中を擦った。 恋人は、無理矢理嫌な事をしたりしない。 強引にも見えるがきちんと顔を見てからしてくる。 性根のあたたかな人だと知った。 「毛布、ちゃんとかけてください」 「遥登がいれば大丈夫だろ」 「俺がいても風邪ひきますから、かけてください…」 自分に興味がないと言っていたが、本当に自分の事には無頓着だ。 頭の中は本でいっぱいなのだろう。 ほんの少しでも自分の事を考えてくれていたら嬉しい。 風邪ひいたら会えませんよ、と毛布をしっかりと引き上げた。 「遥登は寒くねぇか」 「はい。 あったかいです」 手触りの良い毛布にくるまると長岡のにおいと体温、微睡みを楽しむ。 次第にうとうとと目蓋が重くなってきた。 でも、まだ起きていたい。 「目ぇ重くなってきたな。 眠かったら寝て良いからな」 「勿体無いです」 「起きてもベッドにいるか」 「しあわせですね」 「遥登がいてくれればそれが1番しあわせだ」 髪を梳くても、額に触れる唇も、起きても俺だけのものだ。

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