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第391話
食べ終わっても、髪を梳いたり時々悪戯に項に吸い付いてくる。
そりゃ、嬉しい。
すごく嬉しい。
長岡に触れられて嬉しくないなんてありえない。
三条の意識はすっかり本より長岡へ移った。
その証拠にページはさっきから変わっていない。
自分に触れながら器用に本を読み進める長岡を振り返った。
「……あの…、なんで首なんですか」
「んー、遥登がそっち向いてるから」
……あ、じゃあ…
本をベッドに置くと身体の向きを変えた。
綺麗な目が自分を映しているのが見える。
「ははっ、かわい」
細められる目のやわらかさも、あたたかさもほんの少し先にある。
触れる事も簡単で、その目に映る自分はあさましくもありとてもしあわせそうだ。
「正面ならキス出来んな」
顔回りの髪を耳にかけながら顔を撫でられ惚けてしまう。
冷たくて大きな手が気持ち良い。
ちゅ、と唇にキスが落ちてきた。
「洋梨の味がする」
「…っ!!」
「美味い」
「正宗さんも、洋梨の味がします…」
「美味いか?」
頭を上下させるともう1度綺麗な顔が近付いた。
甘いのは洋梨なのかすらわからなくなる。
でも、それで良いやと思えるのはキスをする相手が長岡だから。
「舌出せ」
「ぅ…ん、」
ぬるぬると粘膜が触れ合うのが恥ずかしくて頬が熱い。
その熱を冷ます手の冷たさもすぐに馴染んでしまう。
「ま…、ぁ…」
服の裾から入り込んでき手に待ったをかけたがどんどん上へと上がってきた。
薄い腹から浮き出た肋に触れ、ドキドキと五月蝿い心臓の上で口を止まる。
大好きでたまらないのがバレてしまう。
「あぁ、今日すると下手になんだっけ」
「意地が悪いです…」
「無理強いはしたくねぇんだって」
「…やじゃ、ないですから」
三日月を描く唇を舐めるとその笑みは更に深くなった。
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