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第410話

良いにおいのするふわふわにくるまれ目を覚ます。 聞き覚えのある誰かの声がするがテレビだろうか。 長岡の声でない事は確かだ。 まだ重い目蓋を持ち上げ長岡を見上げると、文庫本を読んでいる。 「まさ…さ…」 「はよ。 声ガサガサだな。 コーヒー飲むか?」 頷きながら起き上がろうとして、腰から響く鈍痛に眉をしかめた。 「…ってぇ」 「大丈夫か」 「は、い」 支えられながらシーツに座り込むと、ベッドヘッドに寄り掛かれる様に枕を動かしてくれた。 そういえば、最後の方は変な体位でヤっていた気がする。 腹筋から腰、そして太股の筋肉にまだ違和感があるのはそのせい。 とは言え、背中を支えてくれるやわらかな枕のお陰で自立している時よりは楽だ。 「いただきます」 ちびちびと口を潤し、喉を潤していき、干からびた身体に苦いコーヒーが染みていく。 セックスの後のブラックコーヒーは美味しい。 「ところで、温感ローションはどうだった?」 「っ!」 驚きと羞恥の色を混ぜたくりくりした目が長岡を捉える。 そして、長岡は楽しそうに微笑んでいる。 そうだ、温感ローション使って… 自分から触ったりなんかしてた… 「遥登、好奇心旺盛だから興味津々だったな。 楽しかったろ」 「そ、れは…」 「後処理ん時、覚えてるか。 浴室で、ケツん中からローションと精液垂らしながら強請ったの。 もっとアツくしてって。 可愛いったらありゃしねぇ。 やっぱ若けぇから体力すげぇな」 「……それ、は…ですね…」 「照れんな。 気に入ってもらえて嬉しいよ。 それと、恋人に求められてすげぇ興奮した。 遥登には負けるけど濃いの出たしな」 綺麗な顔でとんでもない事を言う恋人だが、とても楽しそうだからなんとくそれで良いかなと思う。

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