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第421話
三条の自宅からは見えない少し離れた場所に車を停めると、恋人を味わう。
長いと思った外泊は、過ぎてしまえばあっという間の3日だった。
一緒に年越しをして、ご馳走を食べて昼寝をしたり、本当に楽しい連日も今日で一旦終わり。
明日は各々家族と過ごす事になっている。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。
土曜来るんだよな?
実家からなんか持たされるだろうから消費すんの手伝ってくれ」
「はい」
恋人が子供扱いされるのはいまだ想像しにくいが、長岡だって両親がいる。
両親にしてみれば、成人していようが働いていようが子供は子供。
帰るとレトルト食品だの果物だの米だのを持たされるも言っていたが、子供が心配なのは幾つになっても変わらないらしい。
綾登も長岡も歳は違えど同じ誰かの大切な子供なんだ。
「餅と果物だろうな。
きな粉も貰ってくるな」
「じゃあ、俺はしょっぱいお菓子持っていきますね」
「阿部川も作ってやる」
「甘いのも持っていきます」
「本当に食うの好きだよな」
楽しそうに笑う三条が居てくれればすぐに消費出来るだろう。
こんなガリガリな身体で同級生よりよく食べる。
食後ぽっこりと膨れる腹もそうだが、美味そうに食うあの顔を見るのが長岡にとって食事の楽しみの1つだ。
頬袋を膨らませ、しあわせそうな顔で。
なんでも美味そうに食うが、三条はそれをきちんと言葉にもしてくれる。
美味しそうな顔で美味しいと言われると嬉しい。
単純な事だが大切な事だと三条から教わった。
「俺に金使わなくて良いから気を付けて来いよ。
遥登と飯食うのすげぇ楽しみにしてるからな」
「はい」
帰り道ホッカイロ代わりに買ったお茶で指先をあたためる恋人の指を絡めとると、冷たい指先がじわじわと溶けていく。
もう少しだけ話をして、引き留めた。
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