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第428話
「正宗さん、お湯冷めますよ…」
「また沸かせば良い。
それより、今は遥登とキスしてぇ」
唇が触れるスレスレのところで、にっと口角を上げる恋人は格好良い。
そんな人にそんな事を言われて拒める筈がないだろ。
俺だってキスがしたい。
沢山したい。
「俺も、したいです」
長岡の纏う空気が一層やわらかくなり、頬に触れていた手が顎の下を撫でた。
まるで猫や犬を可愛がる様にすりすりと擦る手の気持ち良さに、ふはぁと気の抜けた声が出てしまう。
はっと気が付いた時には、じわじわと体温が上がっていくのが分かった。
「…かわい」
喉の奥で笑われ恥ずかしさが込み上げてくるが、それよりこんな近くでしあわせそうに笑う長岡を見られる事が嬉しい。
身体の奥の1番やわらかいところがぽかぽかとあたたかくなる。
「もう…おわり、ですか…?」
「もっとキスしような」
うがいをして湿った唇を食む乾いた唇の気持ち良さに背中に腕を回すと、気を良くした長岡が腰を抱いてきた。
こんなの止められる訳がない。
やめたくない。
もっとキスしていたい。
「寝室行くか」
「え…」
「朝からすんのも背徳的で良いだろ。
したくなきゃソファでゆっくりしような。
貰い物の煎餅貰ってきたから食おうか」
前髪をざっくりと撫でながら顔を覗かれた。
綺麗な目玉に物欲しそうか自分が写っているのが見える。
長岡が無理強いでどちらかを選ばせている訳ではない。
これは、俺自身が決めた事だ。
「……寝室、行きます」
「良いのか?
酷くするかもだぞ」
「酷く、された…い、かも…」
「じゃ、後で勉強教えてやるから沢山しような」
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