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第445話
餅が伸びて美味そうだ。
おやつに餅を食おうと誘うと漸くふとんから出てきた三条と餅を食う。
三条の分にはきな粉を沢山かけてやるとうんと喜んだ。
むぐむぐといつもよりよく噛んで食べる姿につられてつい食べ過ぎてしまう。
「まだあるから沢山食ってくれ」
「ありがとうございます」
「きな粉っつうか、和菓子好きだよな。
たい焼きとかどら焼きとか」
「好きです。
でも、洋菓子も同じ位好きですよ」
「チョコレートケーキとか美味そうに食うもんな」
美味いよなと続けると、満足そうな顔で頷いた。
この顔と食べるから美味いんだろうな。
1人の時の飯は味気なくなった。
これは責任をとって貰わないといけない。
「そうだ、動画観てて思ったんですけど正宗さんって蓬ちゃんに似てますよね」
「蓬にか?
蓬は雌だぞ…」
「キリッとした目とか艶々の毛並みとかなんか似てるなと思うんですけど。
ほら、家族は似るって言いますし」
しっかりと餅を噛み締めながら愛猫の事を思い浮かべた。
あの元野良猫は、すっかり家の居心地の良さを知り柏と共に穏やかな時間を過ごしている。
母猫や兄弟達とはぐれたのか1匹で神社にいた蓬と家族になって10年程経つが、
本当にそれがあの猫のしあわせなのかふと考える時がある。
もし、一緒に家に帰らなければ親兄弟と会えたんじゃないか。
自由に外の世界を駆け回れたんじゃないか。
でも、腕に絡み付く姿を見ていると独り善がりだとしても家族になれて良かったと思う。
「家族か。
そりゃ嬉しいな」
嬉しいと表情を和らげると三条のなんとも楽しそうなこと。
さっきまでセックスに興じていた姿とは180度違う。
だけど、どちらもとても愛おしい。
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