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第455話
帰り道の電車に揺られながら、電車待ちの隙間に立ち寄った書店で購入した文庫本を読み進める。
高校の近くまで2人と一緒だったがそこからは三条のみ。
黙々と読み耽る三条は自分を照らす目映い光にふと顔を上げた。
夕日は次第に濃さを増していき一瞬の煌めきは今この瞬間しか見る事の出来ない贅沢な色。
名前のない色が、世界をその色に染め上げていく。
三条の目がその色をしっかりと映すとゆっくりと深みを増していき、山へと隠れてしまった。
あの日、無理矢理長岡に抱かれた日の教室の色は頭に焼き付いている。
目を閉じればあの日の教室のにおいさえ甦った。
それなのに、現実は優しくて自分を抱き締め力をくれる。
背中を押し、励まし、高めてくれる。
あの日が嘘の様だ。
手に待ったチョコレートを自分を強姦した人にあげるなんてあの日の自分に言っても信じないだろうな。
だけど、それがあっての今。
あの日感じた不思議な気持ちは今は居場所を見付け心地好さに変わった。
例え誰かに何を言われようと揺るがないそれ。
帳が空を包み出すと、三条は視線を本へと戻した。
文字の羅列をまたなぞる。
マスクの下で口角を上げながら。
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