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第465話
鍵の差し込まれる音に、三条の尻尾が揺れだした。
廊下に出るとドアを開ける恋人を出迎える。
ゆっくり開かれるドア。
そこから入り込んでくる外のにおいと恋人。
「正宗さん、おかえりなさい」
「ただいま、遥登」
コートを手に持って帰宅してきた長岡に三条の顔はふにゃふにゃになった。
大きな犬が大好きな飼い主の帰宅に喜ぶように、嬉しい事を隠す事すらしていない。
ぶんぶんっと揺れる尻尾に長岡も教師の仮面を外しオフの顔を見せている。
「コート持ちます」
「良いよ。
そんな事させる為に付き合ってる訳じゃねぇだろ。
それより、もっとなんかあんだろ?」
靴を脱ぎながら、解んねぇ?と小首を傾げる恋人の腕にそっと触れると笑みが深くなる。
「…おかえりなさい」
チュ
頬に唇をくっ付けると長岡は至極嬉しそうな顔をした。
「ただいま」
今度は唇。
軽いリップ音に三条の周りに花が咲く。
その顔に仕事の疲れが吹っ飛んでいく様だと長岡は何度もそれを噛み締めた。
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