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第466話
手洗いうがいを済ませた長岡は寝室で着替える。
スーツの類いはハンガーにきちんとかけるが、洗濯するシャツや靴下は足元に落としていき後でまとめて洗濯だ。
美味そうな夕餉のにおいに、つい浮き足だってしまう。
野菜の沢山入った味噌汁が早く食いたい。
今日の夕飯も美味そうだった。
まるで子供みたいだと思っても急いてしまう。
クローゼットを閉めるとほぼ同時にノックが聴こえた。
コンコンッ
「ん?
どうした」
「今、お時間大丈夫ですか?」
「あぁ、改まってどうした」
傍らに見えた紙袋に用件が解ったがやっぱり恋人の口から、恋人の声で聴きたい。
虚しい男の性。
だけど、言葉は大切だ。
「正宗さん、今年も受け取っていただけますか」
「勿論。
ありがとな」
毎年貰っていても嬉しい。
目に見える愛の告白だ。
頭を撫でるとぶんぶんっと揺れる尻尾に、ふにゃふにゃの笑顔。
この笑顔まで貰えるのだからバレンタイン様々だ。
感謝の気持ちを込めてキスをすると頬を染めて恥じらいながらも喜んでくれる。
こんなんだから溺愛してしまう。
愛おしくてたまらない。
ほんと、たまんねぇよな
長岡も購入していたチョコレートを差し出すとぱぁぁっと目が輝いた。
この顔こそプレゼントだろ。
「んじゃ、俺からもバレンタインのチョコレートな。
どうやって食いてぇ?」
「え…?
あ…の……」
「んー?」
「去年と、同じ…」
恥ずかしがりながらも、三条はおずおずと要望を口にした。
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