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第469話
「悪い…」
「あたため直せば大丈夫ですよ。
もう少し待っててください」
よそってなかった白米や味噌汁はともかく、焼いてしまったポークチャップはレタスを除けてレンジで温め直して貰っている。
折角作りたての美味い物を食えたのにそれを台無しにしてしまった事は反省するが、正直分け合って食ったチョコレートはすっげぇ美味かった。
食後のデザートにすれば良かったと思いながら温め直した味噌汁をよそる。
やっぱり野菜が沢山入っていて美味そうだ。
三条の作ってくれる味噌汁は野菜の甘味がぎゅっとしていて実際美味い。
この味で育ったんだろうなと簡単に想像出来る味は自分では出せなくて、実は三条が作ってくれるのを楽しみにしている。
そう言えばいつでも作ると言ってくれるだろうが、三条ばかりの負担になるのは違う。
恋人はお互いが平等でなければならない。
「……それに、あれは俺が強請ったから」
「本当甘やかしてくれるよな。
美味かったか?」
「…はい」
「やっぱり梅酒の?」
「美味しかった、です…」
「そりゃ、なによりだ」
羞恥心の強い三条があれだけ口の中を舐めるのだから美味かったんだろう。
三条好みの味はなんとなく分かってきた。
アイスはチープな味の物を、チョコレートは果実感のある物を好む。
ケーキもそうだがお菓子のチョコレートパイなんかも洋酒が効いていると食い付きが良い。
洋酒は味と言うより香りが良いものを好んでいる様に思う。
それからお菓子全般には甘さ控え目が好み。
和菓子は昔ながらの物の方を多く口にする。
全部甘いもんだな…。
それと、たまご料理。
特に目カレーライスに半熟とろとろのをのせると子供の様に目を輝かせ喜ぶ。
だけど、三条は“なに”を食べるかよりも、“誰”と食べるかを大切にする。
だから、長岡が三条の事を気にかけるのは自然の事だった。
優しい気持ちは遺伝する。
我慢出来ず筍の土佐煮をつまみ食いしながら電子レンジのカウントダウンを眺めた。
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