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第470話

「いただきます」 「いただきます」 手を合わせて頭を下げる。 隣で形の良い頭も上下した。 礼儀正しく丁寧な三条の癖がいつしか移ってしまっただけだが、なんとなく擽ったい。 目の前の美味そうな晩飯に早速箸を伸ばした。 まずは味噌汁だ。 再加熱でくったりした野菜から甘い出汁が出てなんとも美味い。 身体に染みていく。 「うめぇ…」 そんな長岡を見ていた三条はふわふわと笑った。 「お口に合ったみたいで嬉しいです」 「マジでうめぇ」 そして漸く三条も食事に手を付けた。 ポークチャップなんて久し振りに食うがこれも美味い。 三条ももぐもぐと頬袋を膨らませている。 誰かと一緒に食べると飯はより美味い。 それが、この笑顔だと尚更だ。 さっきつまみ食いをした土佐煮を口にしながらありふれてくれた光景を噛み締めた。 沢山の本が積まれた部屋には沢山のしあわせが詰まっている。 恋人の存在だけで心地良くて、あたたかくなるんだから三条は偉大だ。 「おかわりすっかな」 「早い…」 綺麗に、そして美味そうに食う男子大学生の食欲につられどんどん腹の中へ消えていく。

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