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第472話
食後すぐの入浴は心臓や胃への負担が大きいので暫くはゆっくりしつつ消化されるのを待つ。
なんとなくテレビを観たり、本を読んだりするこの隙間時間も好きだ。
なんて言うか、家族っぽいと思う。
特別なにかをしなくても苦じゃない。
田上や吉田ともそうだが別の事をしていても気にならないのは1人の時間も大切な三条にとって大事な事だ。
三条は一旦読んでいた本を閉じると、長岡から淹れて貰ったパックのお茶で口を湿らせた。
氷も入れて貰ったお陰でぬるくて丁度の見頃だ。
いつもの定位置─ソファの上─に沈む長岡は近くに三条を呼び寄せた。
「遥登、腹がさみぃな」
「はい」
「あったけぇ。
やっぱ子供体温は良いな」
「俺もあったかいです」
そしていつもの癖がはじまった。
髪に触れながら器用に本を読み進める長岡の呼吸音がすぐ近くで聴こえる。
生きている音だ。
心地良い空間に気持ちの良い手。
大好きな人のにおいと気配。
次第に気の緩む三条はふへっと頬を緩めた。
大きく揺れだす尻尾に気付いた長岡も穏やかな笑みを浮かべる。
いつまでもこんな時間が続けば良いのに。
されるがまま、伸ばした手で掴んだ文庫本を開き最後に読んだ行を探す。
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