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第510話

飯を食い終わり各々本を読んでいた昼下がり、インターホンが来客を知らせた。 活字に溺れていた意識が急に呼び出される。 びくりと肩を跳ねさせた三条を横目にその来客に検討がある長岡は丸い頭にぽんと触れ対応に向かっていった。 長岡の両親の来客だって可能性はゼロじゃない。 今まで三条がいるタイミングで、この部屋に誰かが来る事がなかっただけで。 今行きますの声と共に部屋から出ていく背中に声をかけようとしてそれを飲み込む。 ただ心配気に大きな背中を見送った。 靴も出しっぱなしだし、大丈夫かな… 廊下の向こうから何かを話し声がするが、この部屋からじゃ相手が誰かまで分からない。 スピンの紐に触れながら待つだけ。 長岡のありがとうございますの声と共に開閉音がまた響く。 不安気な三条をよそに長岡は段ボール箱を手に直ぐ様帰ってきた。 「頼んでたんだよ。 午後着にしといて良かった」 宅配だった事にほっと胸を撫で下ろす。 それにしてもサイズから亀田ではなさそうだ。 いや、キャベツや白菜の類いが入ってなければこれで足りるのかもしれないのだが、いつもより小さい。 長岡は通勤用の鞄からペンケースを取り出すと鋏で封を切った。 プレゼントして半年のそれはまだ固そうだが、どこか誇らしげな気がして嬉しい。 というか、自分も中身を見て良いのだろうか。 「俺も見て良いんですか?」 「勿論。 一緒にやろうと思って注文したんだからな」 一緒にする? なんだろ 箱から出てきたのは見慣れたゲーム機の写真が印刷された箱。 長岡を見上げるとにっと子供の様に笑った。 「ゲームやろうぜ」

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