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第513話

「はー、つい時間忘れて熱中したな」 「正宗さん強いですね」 「遥登の方が強ぇよ」 トイレも忘れて夢中で遊ぶなんてこの歳で中々ない。 仕事だってトイレ位行くし、なんなら飲み物を飲んだりと細々と動く。 だが、ゲームだとどうだ。 本以外でこんなに熱中したのは久し振りだ。 ずっと同じ姿勢でいたせいか身体を動かすと空気の潰れる音がする。 「やべぇ、バッキバキ」 「肩揉みましょうか?」 「前から?」 冗談ににこにこ笑顔を見せてくれる恋人が楽しかったならなによりだ。 俺も楽しかったしな。 それにしても最近のゲームは画質が良い。 動きは滑らかで十数年のブランクがある長岡には目新しかった。 ずっと昔にやっていたゲームのリメイク作品もあるらしいし、もう少しコントローラーに慣れたらやってみたい。 本には敵わないんだろうが。 「買い物行かねぇと食うもんねぇから行ってくるな。 ゲームでも本でも好きにして待っててくれ」 「風呂掃除してます」 「じゃあ、夕飯は遥登の好きなもんにしような。 なに食いてぇ?」 「良いんですか。 うーん、…じゃあ、チャーハンが食べたいです」 「分かった」 生徒や保護者に出会すのも嫌なのでさっと買い物を済ませて帰ってくるが、それにしてもご機嫌な三条を部屋に残して出掛けるのは勿体ない。 ほんと、頬ゆるっゆるにして笑うよな 連れて行きてぇけど大学の近くだと遥登の方もバレる可能性あんだよな こればかりは大人になるしかない。 帰ってきてもご機嫌なままだろうし速攻で帰ってこよう。 コートを羽織り自動車の鍵とスマホ、それから財布をポケットに突っ込み、恋人からのプレゼントのマフラーを巻き玄関へと向かう。 玄関も寒いが三条は律儀に後ろを着いてくる。 従順な犬みたいだ。

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