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第518話

余程嬉しいのか三条はスマホをすいすいと操作すると、いつもより近い場所にやって来た。 腕がぶつかりそうな距離。 甘えたいんだなと分かった長岡は腕を引っ張り引き寄せた。 「もっと寄れば良いだろ」 「あ、失礼しま…え?」 膝の上に誘導するとほんの少し悪戯心が湧いてくる。 薄い腰に腕を回し後ろで組んだ。 これで、三条はここから動けない。 「あの、ここは近過ぎでは…」 「嫌か?」 「……嫌じゃ、ないです」 「嫌じゃないだけ?」 こんなの誘導尋問と同じだ。 だけど、そうでもしなければ羞恥心の強い三条からなかなか口に出す事は少ない。 セックスをしてスイッチでも入っていれば別だが、羞恥心を捨てる前の状態でも聴きたいのが本音。 「う、嬉しい、です」 「俺も嬉しい」 また唇を触れ合わせ、泊まってくれた事を実感する。 子供体温で清潔なにおいがする三条。 触れ合った唇からそのあたたかな体温が伝わってくる。 少しずつ深くなるキスに三条の顔が赤くなっていく。 膝に乗っている分だけ高くなった三条から唾液を舐めとると喉を鳴らした。 「…ン…ん、…」 頬をするりと撫でると鼻にかかった声は甘さを増す。 たまんねぇ これだから遥登とのキスはやべぇんだよな 上顎を舐めようと顎に手をかけた瞬間、三条のスマホがメッセージの受信を知らせた。 ぽわっとしていた空気は一転し、優等生に戻ってしまう。 「あ、すみません…。 母からだと…」 慌ててスマホに手を伸ばした三条は背中を向けて内容を確認している。 襟刳りから見える首筋も髪の隙間から覗けている耳も真っ赤だ。 良い雰囲気だったのに、なんて悔しがる事はない。 だって、伸びた夜はまだはじまったばっかりだろ。

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