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第520話
コーヒーを飲みながらぼーっと眺める特撮は、子供向けと言っても熱いものがある。
勿論、大人が真面目に製作しているし芯がある話だ。
だが、それを除いても大切なものを守るという1本の通ったものと真っ直ぐに向き合う姿は大人も子供も関係なく見習わなければならないと思った。
ふと隣に視線をやると真っ直ぐな目で食い入るように観ている。
こういう子供心を大切にしているところも遥登らしい。
本人は無自覚だろうが、大人になっても忘れて欲しくない三条の良さの1つだ。
何事にもしっかりと向き合う三条を見習わなきゃな。
ローテーブルに肘を付きそこに顎を乗せてハラハラドキドキ、ワクワクしている横顔を堪能する。
三条が何かを吸収する姿はいつ見ても羨ましい。
それをどう自分の力にするのか楽しみだ。
キャストが踊り出すと三条は息を吐いた。
「ありがとうございました。
熱い展開で食い入ってしまって…」
「良いよ。
俺も観てたし。
面白かったな」
腕を上げぐーっと伸びると背中が鳴った。
三条はコーヒーを飲みながら楽しそうな顔を見せてくれている。
こんなやわらかな顔の裏側は豊かな感受性と好奇心、あの真剣な眼差し。
人の良さそうな笑顔で鋭い爪を隠してるんだからこわいものだ。
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