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第522話
「正宗さん…?」
「ん?」
「あの…ページが捲れません…」
「あぁ、悪りぃ」
長い脚の間に閉じ込められるまでは何時もの事だが、今日は髪ではなく手を弄っていた。
長岡は雑誌だが三条は文庫本を手にしていて流石にページが捲れないと申し出た。
「ほっせぇよな。
でも、節はしっかりして男の手なんだよな」
「男ですから」
日焼けしにくい白い肌もガリガリの貧相な身体もコンプレックスだ。
体毛だって薄い。
小さな頃はよく女の子に間違えられていた事もあり自分の容姿があまり好きではなかった。
だけど、手は細い分だけ節が目立ち喉仏と共に男らしいと言える箇所になった。
「正宗さんの手荒れ大分治りましたね」
「遥登のお陰でな。
ありがとな」
後頭部に唇をくっ付けると髪の隙間から見える耳が赤くなった。
ついでにそこにもキスをする。
「まだ本読みてぇ?」
「…狡いです」
「狡い大人に捕まったのは遥登だろ」
「狡い…」
そんな事をされれば、もっとを期待してしまう。
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