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第533話
三条は春休みでも学生の本分を忠実に守り、長岡に会える日は参考書を持ってきては深い質問をする。
1つ1つ説明をすると面白い位に吸収するので長岡もつい色々と教えてしまう程。
そんなに頭をフル回転させるから腹が減るんだ。
12時を待たずして大きな腹の音が2人の懐かしい時間を遮った。
今日の昼食は、三条が手土産に持ってきたパン。
コッペパンに黒酢あんに絡ませたからあげを挟んだ惣菜パンや、サンドイッチ、においに釣られて買ったカレーパン、クリームチーズをのせたペストリーにメロンパン。
机の上は美味しそうなパンとコーヒーが並んでいる。
「ん、このパンうめぇ」
「お口に合って良かったです。
俺、この店のからあげパン好きなんです」
店内で揚げているフライドチキンも美味しいし、一口サイズのドーナツも揚げたてはカリカリで美味しいと言うと今度一緒に買いに行こうなと微笑んでくれた。
こんな優しい人と食べるからより美味しいんだと、からあげを噛み締める。
溢れる気持ちは食事だけじゃなく、一緒に過ごす当たり前になった日常をよりあたたかくしてくれていた。
噛み締める度に、隣に居られる事を喜び実感する。
しあわせだと深く感じる。
「遥登、一口交換しねぇ?」
「はいっ」
差し出されたカツサンドに食い付くと口の端に付いたソースを拭われた。
「付いてんぞ」
「あ…、すみません」
「カツ分厚いからな」
子供みたいで恥ずかしい…。
さらりとフォローされ改めて大人だなと思い知る。
9歳の差は大きい。
だけど長岡はだからと言って偉ぶったりせず1人の対等な人間として接してくれる。
恋人は対等だろと。
それが嬉しい。
「こっちもどうぞ」
差し出したそれに長岡は、あー、と大きく口を開けて齧り付いた。
「ほんとだ、うめぇ」
「もう1つあるので食べてください」
「ありがとな。
んじゃ、遠慮なくいただきます」
長岡なら口の端を汚しても、それを拭う姿さえ様になるのに。
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