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第535話
「ありがとな。
遥登が手伝ってくれたお陰で早く終わった」
「どういたしまして。
俺こそ、いつもありがとうございます」
すべての衣類をクローゼットにしまうとまだ熱を持ったアイロンを端に寄せ、伸びをした。
「遥登」
「はい?」
「キスしても良いか?」
三条のくりくりした目がより大きくなる。
綺麗な目が長岡を捕らえると、ふぃ…と逸らされ、また長岡を見た。
長岡はその目に羞恥の色を滲ませながらも嬉しそうにしているのを確認すると、小首を傾げてみせた。
サラッと前髪の幾房が溢れ落ちるのがなんとも色っぽい。
「はい。
あの…俺も、したいです」
空気を和らげる恋人は頬を撫で色っぽい顔をしながら顔を近付けてくる。
思わず顎を引いてしまうが今更そんな抵抗小さな事だろう。
長岡は構う事もせず顔をそっと唇を寄せた。
チュ…
チュゥ
唇を触れ合わせるだけの軽いものを数度繰り返すと、唇を食まれる。
「…っ」
そして唇を舐められ口を開けろの合図。
薄く口を開けると、ぬるりと舌が入り込んできた。
「ん…ん……っ」
舌をなぞられ、吸われ、甘く噛まれゾクゾクとしたモノが脳味噌を痺れさせる。
自分の口腔内を自分以外が自由に動くのがこんなに淫らだなんて、こんなキスを知るまで知らなかった。
「ぅ…ン」
上顎をゆっくり、ゆっくりと舐められ鼻にかかった媚びた声を漏らしてしまい、思わず長岡の腕を掴んだ。
息も出来ない。
くるし…
キスの最中ってどうやって呼吸するんだっけ…
苦しくなり数度脇腹を叩くと漸く唇が離れたが、唾液が繋がってそれはそれで恥ずかしい。
「嫌か?」
「だから…その聴き方は狡いです…」
切れた糸が顎に落ち、それをそっと拭れ更に体温が上がる。
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