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第538話
眠い目を擦りながらリビングに下りると、既に兄が炬燵に寝転んでいた。
大学はもう春休みでもっと寝てられるのに炬燵でテレビ観てんの。
せめて綾登が起きるまで部屋にいれば良いのに。
「おはよう」
「おはよう。
眠そうだな」
「んー、テスト勉強してたから」
牛乳を取りに行くついでに母さんにも挨拶をする。
別に、牛乳が目的で挨拶はついでだし…。
挨拶はした方が気持ち良いからするだけだし…。
「おはよ」
「おはよう、優登」
思春期独特の気持ちと素直になりたい思いが反発し合う。
優登自身それに居心地の悪さを感じてはいるが、だからと言ってホルモンバランスまで自分の思う通りにする事は出来ないもどかしさについ苛立ってしまう事もある。
だけど、挨拶だけはしてしまうのを両親は可愛いと心中こっそり笑っていた。
「…牛乳とジャム貰う」
「どうぞ」
地持ち上げた牛乳パックはとても軽くて残り僅か。
それだけでは足りず、新しいパックからも継ぎ足した。
そそくさと自分の席に座り手を合わせる。
やっぱり、反抗的になりきれない次男は可愛い。
「いただきます」
鮮やかな色のジャムを塗り広げると眠くてしょぼしょぼする目でパンに齧り付いた。
ジャムが甘くて美味しい。
やっぱり甘い物は特別だ。
でも、腹いっぱい食うと眠くなりそうだから2枚でやめとこう。
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