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第539話
優登は山の方から吹く風の冷たさに身を縮ませる。
いくら雪が降っていないといっても、空気の冷たさは冬のものだ。
さぶ…
まだ学校にも着いてねぇけど、もう帰りてぇ
家に兄がいるのなら一緒にゲームをしたり遊びたい。
兄と綾登とばかり家に居て自分だけ学校なんて、除け者みたいで寂しい。
マフラーに顔を埋めながら道路を歩いていると、見知った頭を見付けた。
小学校から仲良しの一樹の後ろ姿だ。
たったっと駆け隣に並ぶと一樹も同じくマフラーに顔を埋めながらにっと笑った。
「一樹、はよー」
「優登、はよ。
勉強した?」
「うん。
結構した」
早速、今日の試験についての話題に優登は努力を隠す事なく頷く。
頑張る事は恥ずかしい事じゃない。
兄を見て感じた事を大切にしている優登に一樹はにっと笑う。
「優登のそういうとこ、すげぇ良いと思う」
「一樹に遠慮はしねぇよ。
一樹もすんなよ」
こちらも本音だ。
今更、遠慮し合う関係でもない。
友人関係に礼儀は大切だと思うが、いらない遠慮や忖度はしたくない。
友達ってそういう事だろ。
「一樹は?
苦手な範囲なんだろ」
「ボチボチかな…。
勉強しなかった訳ではないけど、ゲームもしちゃった」
有難い事に両親のお陰で記憶力は悪くない。
勉強自体も嫌いではないし、良いお手本がすぐ近くにいるので小さな頃からそれが当たり前の様にする事が出来た。
恵まれた環境だとは思う。
だけど、決して環境だけではない。
優登自身も努力をしている。
毎日コツコツと勉強をして、分からない事を分からないままにしない。
そっちの方が格好良いと知っているから。
「ゲームの誘惑は強いよな」
「だよなぁ」
友人と肩を並べ学校へと歩るく優登はやっぱり笑顔が似合っている。
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