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第545話
冷たくて大きな手が細くて骨っぽい手を撫でてくれる。
触れたそこからあたたかいものが身体を抱き締めてくれ、三条はぽわぽわと恋人同士の甘い空気に頬を染めた。
「帰ったらイチャイチャしような」
癖のない真っ直ぐな髪が頷きと共に揺れる。
「遥登」
まるで長岡の部屋にいる時の様な雰囲気をたち切ったのは幼い子供の大きな声だった。
「あーっ!
ママ、みて!
へりこぷたー!」
「っ!!」
思わずキツく手を握ってしまい、慌てて力を緩めた。
危うく雰囲気にのまれるところだったが、ここは外だ。
万が一にでも長岡を知る保護者に見られたら大変だと思い出し、いつもの顔を取り繕う。
車からそう遠くはない歩道を歩く子供が空を指差していた。
隣に並ぶ母親と楽しそうに話、また歩き出す姿にホッとする。
「…ほんと、可愛いよな」
口元を隠しながら噛み殺せない笑いを漏らし、握り返してくれる長岡は楽しそうだ。
これが大人の余裕ってやつなのだろうか。
まぁ、この顔が見られたから良いか…
それに部屋に帰ったらイチャイチャするんだし
三条の手を確認するように、にぎにぎと手を動かす長岡。
「キスは帰ってから、な」
反対の手でパンをグイグイ差し出すと、長岡は漸く口を開けてくれた。
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