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第546話

「ただいま」 「お邪魔します」 長岡の背中に頭を下げると、その背中が急に立ち止まった。 「正宗さん?」 「もう部屋だし良いか?」 冷たくて大きな手が、頬から耳を撫で、そのまま髪を梳く様に頭まで撫でた。 ここは玄関。 それも、まだ靴すら脱いでいない。 だけど、頷いた。 待てないのは自分も同じ。 綺麗な顔が近付いてくると目を閉じる。 殆ど同時に、唇にそれが触れた。 チュ… 少し離れてはまたくっ付け、唇のやわらかさを楽しむ様なキスをする。 やっぱり呼吸を止めてしまう三条は唇が離れる隙に息を吸い込んでいたが、次第にその瞬間すらもどかしく思えてきた。 もっと長岡に触れたい。 触れて欲しい。 キスの合間に恋人の名前を呼ぶと唇を舐められた。 口を開けろの合図。 キスが深くなるサイン。 「ん…ん…、」 舌を絡めとられ鼻にかかった声を漏らすと長岡の動きが大胆になった。 舌をなぞったり、吸ったり、甘く噛んだり。 時間をゆったりと使いながらのキスは、貪ると言うより味わうと言う方が当て嵌まる。 そう、味わい尽くされる。 三条からも長岡に触れ、もっとと強請った。 「んン…、っ…ぁ…」 上顎を舐められ、ゾクリと腰に響いた。 もう止まらない。

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