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第563話
汚れたベッド─と言うより部屋中─の片付け中、良い子にソファで眠っていた恋人は寝室に運ぶと薄く目を開けた。
「ま、さ…むねさ……?」
「ん、俺だ。
ヤり過ぎちまった。
疲れたろ。
少し昼寝しような」
ふわふわの毛布を細い身体にかけてやると細い指が服を握ってきた。
大丈夫だとその手を握り隣に寝転んだ。
消臭剤を撒いたと言っても、まだ青臭いにおいがする気がする。
自分のだと思えば萎えるが三条の物のにおいだと思えば気にならない。
そういう事にしておこう。
もう目を開けるのも限界そうな顔に唇をくっ付けるだけのキスをして甘やかす。
これが楽しいんだよな。
でろでろの骨抜きにしてぇ。
「すき…です」
「敵わねぇな」
穏やかな日々が目に見えて失われていく。
テレビの向こうだけの話じゃない。
現実に起こっている、事実だ。
「あい…し、て………ま……す」
穏やかな恋人の顔はとても慈愛に溢れていて世界中の誰がどうなってでも守りたいのに、世界の誰をも守らないとこの子は悲しむ。
名前も知らない誰かの悲しみを自分の悲しみの様に受け止める。
俺の事だけで一杯にしたいのに。
だから、今だけはそうであってくれ。
俺以外の事は考えるな。
「俺も、愛してる」
長岡も横になると、眠そうにする恋人の髪を撫でながら微睡みを分け合った。
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