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第567話
ベッドから降りると確かに腰が鈍く痛み、足もいつもより踏ん張りが鈍い。
事後は殆んど毎回こうだ。
長岡は平気そうだがどうなんだろう。
その痛みすら愛おしいなんてのは惚れた弱み。
ゆっくり歩く三条に歩幅を合わせ長岡もゆっくりと歩いてくれる。
それに、まだ中身の入ったマグカップだって持ってくれた。
こういうさりげない気遣いが恋人っぽいな、なんてキュンとする。
「大丈夫か?」
「はい。
平気です」
「無理だけはすんなよ」
つい数時間前にセックスをした場所は綺麗に掃除されていて、そんな痕跡を少しも残していなかった。
ただ、直視するには生々しいと思う位の時間しか経っていないだけ。
炊事場だけじゃない。
ソファも寝室も。
それにしても後処理だけじゃなく後片づけまでして貰うなんて腑甲斐無い。
「あの…、片付けまですみません…」
「あぁ、気にすんな。
ついでに掃除も出来たし一石二鳥だろ」
掃除がついでか後片づけがついでか、と小首を傾げると細かい事は気にすんなというように頭を撫でられた。
「今日は蒲鉾あんだよ。
葱と蒲鉾のっけた、かきたまの柔麺で良いか?」
手を洗いながら聴いてくる長岡に頷く。
長岡の作るふわふわのかきたまも美味しいが、更に蒲鉾までのっけてくれるなんて贅沢だ。
切ってのせただけでも気分が上がる。
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