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第574話

入浴を済ませ浴室から出てくると脱衣室に置いておいたスマホがメッセージを知らせていた。 髪の水分を粗方拭き取り湯冷めをしない努力だけはしつつ、差出人が気になる。 濡れた手を拭いしっとりとした手は部屋着ではなくスマホへと伸びた。 ポタポタと雫を髪から落としながらそれを手に取り、片手でいじる。 正宗さん…? 『リュックの中にプレゼント』 差出人は今しがた分かれたばかりの恋人。 勝手に鞄を開けた事を謝罪しつつも簡潔な文面に疑問符が浮かんだ。 今日は特に特別な日ではない。 ホワイトデーにも、新学期のアレにも早い。 プレゼント…? なんだろ 恋人同士ともなれば特に理由もなくプレゼントを贈ってもおかしくはないのだが、ならなんで会っている時に手渡ししなかった。 長岡はリボンをほどく瞬間すら嬉しそうに眺める人だ。 皆目検討がつかない。 また一滴肩に落ちては背中へと流れていく水滴が次第に冷たくなってきた。 湯船に浸かり温まった身体は熱くとも、風邪でもひいたら厄介だ。 とりあえず着替えよ リュックの中を見てから返信 風邪なんてひいたら会えなくなる わしゃわしゃと髪を拭い直し、パンツを穿く。 真っ赤な身体を身体に馴染んだ部屋着で隠し、マグいっぱいに麦茶を持って部屋へと足早に戻った。

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