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第575話

タオルを被ったままリュックを漁ると、見慣れない─だけど何処かで見た事のある気がする─紙袋が入っていた。 これか? こんなの、いつ入れたんだろ なんとなく既視感……じゃない。 知っている。 思い出した。 この紙袋と重さを三条は知っていた。 それに触れ、一気に記憶が甦る。 恐る恐る中身を覗くとやっぱりそうだった。 ローター… 高校1年だった頃、まだ長岡と付き合う前に脅され授業中に弄ばれたもの。 新品なので正確には同じ物ではないが。 あれは……たまに使われてる。 あの時はスイッチは長岡が持っていたし外装なんて見た事がなかったから知らなかったが、15メートルも離れていても使える物らしい。 性的な事にまで日本人らしく勤勉さを出さなくても…と思うが。 まさか間違えたのではと淡い期待を込めてメッセージを飛ばすも、すぐにこれで合っていると返ってきた。 『今日は一段とスイッチ入ってたから、自分の手じゃ物足りねぇかと思って』 そ、そこまで、はしたなくない…はずだ。 『あんまり1人で開発してんなよ』 「そんな事はしませんよ。 それより、なんで」 『新品だけど、洗ってから使えよ。 アルコール消毒で拭いても良いけど、拭いたら乾くまで突っ込むな。 熱くなんぞ』 折角落ち着いた身体は一気にアツくなり、顔が真っ赤になる。 髪の水気を吸って湿ったタオルで口元を隠しながら必死に心臓を落ち着ける。 濡れたタオルの冷たさが今はこんなに気持ちが良い。 『使ってる時に連絡くれると嬉しい』 固い職業の人程変態的趣向の人が多いというのに、頭がクラクラするほど頷ける。 でも、嫌じゃない自分もいる。 とにかく隠さなきゃ… 綾登はともかく、優登はこの部屋来るし… クローゼットに、と思ったが物は物だが長岡からのプレゼント。 なんだか目の届かない場所に隠してしまうのは勿体ない気がしなくもない。 ……というか、勿体ない。 隠し場所に悩んでいると、またピコンとメッセージを知らせた。 『実家で隠す場所ねぇから引き取る』

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