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第579話
「は…、休校…?」
ニュース番組で淡々と話す総理の話に優登は信じられないとばかりの顔をした。
そりゃそうだ。
学生達だけでなくその家族にとっていきなり過ぎる決断だ。
目下に迫った卒業式、高校入試。
年長、6年生、3学年にとって最後の大切な思い出の場が、なしにされてしまうのか。
優登は口を閉じ、それらを一所懸命に咀嚼しようとしている。
まだ1年生だとしても優登にとって大切な学生生活の真っ最中だ。
春休み中の自分が軽々しく何か声をかける事は出来ないと三条も、ただじっとテレビ画面を見詰めていた。
母も台所から出てきて同じくニュースを観ているが、なんとも似合わない顔をしている。
休校って、正宗さんは大丈夫かな
こんないきなりじゃ休校中の課題の用意だって無理だろうし、卒業式とか入試の準備もどうするんだろ…
不安をあたたかいお茶と一緒に飲み込んだ。
過度に不安になってしまったら、家族に何かあった時受け入れる余白がなくなってしまう。
守る為には余白は必要だ。
父親は家の外で働いている。
家を守るのは休み中の自分。
「うー、うっ」
「うん、どうした」
いつもと違う空気から何かを感じ取ったのか、綾登が抱き付いてきた。
やわらかな髪を撫で背中を擦る。
母親がよくしてくれたそれをするしか出来ない。
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