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第580話

上からの通達もなく突然発表された政策に、学校内はピリ付いている。 その上だって昨夜、自分達と同じタイミングで聞いた筈だ。 今頃向こうも大急ぎで色々な事を決めている最中だろう。 これに関しては突然過ぎたとしか言えない。 「明日じゃ間に合わないからこうなってんだろ。そもそも誰が土曜の授業削ったんだよ」 「柔軟にって命令なのかどうかはっきりしてくれよ」 ネットニュースに愚痴を溢す声。 疲れた顔をする子育て世代。 ちょっと職員室に顔を出したら、なんだか疲れが移った様にドッと肩が重くなった。 確かに、唐突で場当たり的な対策なのかもしれない。 これが正しいとも正しくないとも言えないし、何が正解なんてテストみたいに答えが用意されている訳でもない。 正直、疲れてしまう。 だけど、大人に振り回される子供の方が不安だろう。 子供達を考えれば自分は自分に出来る事をするしかないと思う。 冷たい空気の溜まる廊下を歩きながら小さく溜め息を吐き出した。 それにしても、疲れた。 まだ午前中だと言うのに。 はたっと気が付くと、目下に頭が飛び出してきた。 「あ、すみません…」 「び… くりした…」 いきなり現れた小さな頭。 教頭だ。 教頭は突然目の前に現れた長身の長岡に対し、目を大きく見開きびっくりしたと面白い顔をしている。 すぐに咳払いをしていつもの顔に戻ったが、疲労の色は隠しきれていない。 「すみませんでした。 急いでて」 「いえ、僕の方こそすみません」 「あぁ、ちょうど良かった。 これ、国語科に回していただけますか」 「はい。 わかりました」 「長岡先生も気を付けてください」 「ありがとうございます。 教頭先生も気を付けてください」 「あぁ、はい」 教頭は丁度良かったとばかりにプリントを2枚手渡した。 入試についてや、職員への手洗いうがいの徹底、その他にも教頭の心遣いが書かれているプリント。 疲れの色が濃い教頭はそのまま他の科の教論へと声をかけに行った。 ありゃ、保護者と上と職員達に気を使い過ぎの疲れだな 頑張れ、毛根 ふわふわとした髪の毛が生える頭部の危機が少しでも先延ばし出来ると良いなと思うしかない。

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