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第583話

ボーロを前に三条は眉間に皺を寄せている。 ノーマルの他にもう1つ。 ほうれん草の練り込まれた物か、にんじんの練り込まれた物か、悩む。 綾登は甘い野菜が好きだ。 にんじんの方が喜ぶのは間違いない。 だが、ほうれん草のあまり好きではない弟にその美味しさを知って欲しくもある。 1部だけを食べ苦手だと決めつけるには勿体ない程の調理法や食べ方、品種があるからだ。 だけど、それは食べられる側のエゴなのだろうか。 ただ、優登が作ったほうれん草入りの蒸しパンは喜んで食べる。 つまりは、食べられる物だということだ。 うーん… どっちも買うか あと、お魚せんべい 優登と一緒に食べてしまったので、食べた分を返さなくては。 食べ物の恨みはこわい。 ぶーぶーと頬を膨らませていた。 品切れの一角を見ると、心がざわざわと騒ぎだす。 まだ幼い弟。 今が楽しい時の弟。 この子達から笑顔が消えてしまうのがこわい。 大切な弟達だけじゃない。 長岡は大丈夫だろうか。 田上や吉田、知佳ちゃん未知子ちゃん。 誰一人欠けて欲しくない。 欠けるなら自分が良い。 その方がずっと楽。 駄目だ そんな事ばっか考えてると精神衛生上良くない とにかく、出来る事して予防 それから優登と綾登と沢山遊ぼう そう考える方がずっと有意義だ。 長岡の事だって心配ばかりが浮かぶ。 じゃあ、何が出来る。 長岡に対して出来る事があるか。 先ずは自分の事をきちんとすべきだ。 それが、結果として長岡を守れるはずだから。

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