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第595話
ホイッパーで不満も一緒に混ぜ込んでしまう。
甘くしてふわふわに焼き上げて、しっかり噛み砕いて飲み込んでやる。
だって、悔しいだろ。
俺は何も出来ない。
ただ、大人が決めた事に従うしか出来ない。
でもそれは、俺達子供を守ろうとしての事だ。
それに不満を言うなんて子供っぽいって思う。
目標の兄は、大きくておおらかで穏やかだ。
傷付いてもにこにこしてるから気付かれにくいけど、よく見ると悲しそうに笑ってる。
なんで他の人は気付かないんだろって思う。
見てれば分かるのに。
焼き上がりを知らせる音楽に兄としていたゲームを一旦中断し、台所へ向かう。
オーブンを開くと甘い良い匂いますがふわっと広がった。
「おー、上手く出来た」
「うはっ、うまそ」
見た目は良い感じに出来た。
ふっくら膨らんでいるし中までしっかり火も通っている。
いくつかはマシュマロをのせたが、それがスモアみたいであったかい内に食べたい。
こんな上手く焼けたら、まさかこれに不満を混ぜ込んだなんて分からないだろう。
型ごとゴトンッと濡れた布巾の上に落として衝撃を与え縮むのを防ぐと、ケーキクーラーにのせていく。
綾登が寝てるし、カップケーキ類はしなくても大丈夫なのだが癖だ。
兄はそれを嬉しそうに眺めていた。
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