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第598話
愛車から降りたまま、じっと空を眺める長岡を3月の風が撫でる。
真ん丸の月を見上げて思うのは、満開の花を咲かす恋人の事。
あれは何に見えるのだろうか
エッグタルト
どら焼
目玉焼き
月餅とかも似てるよな
あたたかな春の気配がより人恋しくする。
春月に誘われて遥登と散歩がしたい。
山が笑い、町が色付くのに、暗いニュースが今日も陰を落としていく。
もうすぐみんなが待ち望んだ春だと言うのにな。
ヴーヴー
着信を知らせたポケットに手を突っ込んで取り出した画面を見ると、油揚げとたまごののったうどんの画像。
続いて送られてきたのは、その上にとろろ昆布がのったもの。
蒲鉾や葱が見えない位にのっけられている。
ははっ、うまそ
しらす飯も食うのか
葱も山盛りじゃねぇか
つぅか、どっちも丼だし
丼の中の月には朧がかかってしまったが、空に浮かぶそれはさっき見上げた時より美しさが増していた。
『今日も月が綺麗ですね』
「あぁ、綺麗だ」
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